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『日中の土地収用制度の比較法的研究 公益事業認定・収用手続・損失補償の理論的および実務的検討』

楊 官鵬 著
A5判・217頁 
定価:3,300円(税込)
978-4-905366-70-6 C2032
2017年11月発行

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本書の概要

日中両国において土地・財産制度に関する研究は膨大に存在するが、これまでのところ、土地収用制度に関しては必ずしも十分な研究が行われているわけではない。
特に中国において土地収用制度の整備が喫緊の課題となっている現状に鑑みれば、中国の土地公有の制度を踏まえたうえで資本主義諸国の収用制度との比較法的な研究が求められていたところであった。本論文は、このような要請に応えるものだと評価できる。
したがって、本論文は、比較すること自体に難しさがともなう中国の土地収用制度と資本主義諸国のそれとの比較を土地収用の局面で行いつつ、複雑な中国の収用制度と収用実務の現状を全体として把握したうえで、中国における土地収用制度の立法的改革のために、そこでの中心的論点である公益事業認定および土地収用手続の制度を理論的・実務的について深く検討するという困難な課題に取り組むことになったのである。
「本書 読者の皆様へ―本書を推薦する 早稲田大学法学学術院教授 岡田正則 より」

目次

序章
1背景
2本書の要旨
3解説
 (1)中国における国、地方の政府の関係
 (2)中国の裁判所の系統と管轄
 (3)法令の種類とそれを公布する政府組織、効力範囲との関係
 (4)用語の解説

第1章 各国の土地収用に関わる「公共利益」

 第1節 歴史背景
 第2節 土地収用における「公共利益」
  (1)各国の概況
    1.中国
    2.アメリカ
    3.フランス
  (2)財産制度の立場から「公共利益」を見る
 第3節 公共利益に関する各学説
 第4節 結び

第2章 中国の土地収用制度における公共利益―公共利益認定の制度と学説に関する比較法的考察
 序章
 第1節 中国の用地取得
  (1)土地利用規制の法体系
  (2)土地収用の概況
    1.都市部の土地収用
    2.農村部の土地収用
 第2節 中国の公共利益論
  (1)公共利益に関する各学説
    1.公共利益とは何か
    2.公共利益判定の問題点
     1公共利益を判定する要素
     2公共利益の判定主体・手続
      ①立法機関判定説
     ②手続判定説
  (2)財産制度の立場から公共利益を見る
  (3)土地収用制度上の「公共利益」の位置づけ
 第3節 中国の公共利益認定制度
  (1)公共利益に関する法制度
  (2)公共利益の概念の法定実践
    1.立法動向
     1民法典草案(学者提案)
     2物権法
    2.土地収用の範囲の確定
     1「中国土地観勘測計画院課題組」の主張
     2?相木の主張
     3張文栄の主張
     4「土地収用制度改革課題組」の主張
     5そのほか
      ①厳金明の主張
      ②劉俊の主張
 第4節 結び

第3章 日本の土地収用における事業認定の制度と学説
 序言
 第1節 事業認定制度の沿革を踏まえて
 第2節 収用対象事業の公益性と土地収用法20条の認定要件
  (1)公益性の概念と比較法的意義
  (2)事業の認定機関
  (3)事業認定の性格と要件
 第3節 事業認定における裁判統制
  (1)裁判例の動向
  (2)違法性の継承に関して
  (3)小括
 第4節 事業認定制度の再検討
  (1)いわゆる「手続の迅速化」について
  (2)収用制度における事業認定の位置付け
  (3)事業認定の方向
    1.情報公開と住民参加説
    2.司法的行為化説
   3.司法審査強化説
   4.国土計画主導説
 第5節 結び

第4章 土地収用手続きの日中法制度の比較考察
 
 第1節 日中比較研究の動向
  (1)収用制度の背景である中国土地制度の変革
  (2)比較研究の動向
    1.小高 剛
    2.平松弘光
    3.江 利紅
    4.日中法学交流の動向
 第2節 比較研究の注意点と関連概念の整理
  (1)土地制度の相違と個々の特徴
  (2)概念の再整理
    1.土地・家屋・不動産
    2.収用・権利使用・土地使用権
    3.収用・回収と徴収・徴収
    4.土地徴収と立ち退き・家屋徴収・使用権回収
 第3節 日本の土地収用手続
  (1)土地収用手続に関する法の変遷―土地収用法を中心として
  (2)土地収用法による収用手続
    1.事業認定手続
    2.収用裁決手続
 第4節 中国の土地収用手続
  (1)土地制度の概要
    1.都市部の家屋収用手続
    2.農村部の土地収用手続
 第5節 結び

第5章 土地収用における損失補償と救済の比較法的考察

 第1節 損失補償の日中比較
    1.日本の損失補償
    
    2.中国の損失補償
  (2)補償の確定
    1.日本の場合
    2.中国の場合
     1都市部家屋収用の補償    
      ①被収用家屋価値の補償    
      ②移転・安置補償と営業
      ③補助・奨励
     2集団所有土地の補償
  (3)補償金の支払い
  (4)諸国の収用補償の動向
 第2節 土地収用に関わる行政訴訟による権利救済
  (1)「行政不服審査法」「行政訴訟法」の関連規定
  (2)都市部の不動産収用の際の行政訴訟・救済
  (3)集団所有土地の収用に関わる行政訴訟・救済
 第3節 結び
  (1)比較法的考察の結果
  (2)中国土地収用制度についての指摘
  (3)立法の提案

第6章 補論:家屋収用補償に係る中国司法救済の現状と課題―最高法院が公表した典型的な裁判例を中心に

 序言
 第1節 「家屋収用補償条例」公布以後の立法動向
  (1)土地収用の際の「悪性事件」を防ぐ緊急通知
  (2)家屋収用・補償決定の強制執行についての司法解釈
  (3)「違法な建築物」などの強制取壊しに関する司法解釈
 第2節 最高法院が公表した典型的な家屋収用の裁判例
  (1)家屋収用決定に係る事件
  (2)家屋収用補償決定に係る事件
  (3)家屋の強制取壊しに係る事件
 第3節 家屋収用補償に係る立法の動向
  (1)「行政訴訟法」の改正
  (2)「集団種有土地収用条例」の起草
 第4節 結び

終章
 第1節 結論
 第2節 今後の課題

参考文献
中国学者の所属(一部)
索引

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